「本筋に関係ない余計な情報を排除していくことで、本当に言いたいことが伝わっていきます。まずは、思いついたまま書いてしまう癖をやめましょう」

 2月の講師には、村山由佳(むらやま・ゆか)氏をお迎えした。 1964年東京都生まれ。1993年『天使の卵-エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞受賞。2003年『星々の舟』で直木賞受賞。2009年には『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞した。本講座には、2015年度以来2年ぶりの登壇となる。

 また、ゲストとして千早茜(ちはや・あかね)氏をお迎えした。 1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞、翌年には泉鏡花文学賞を受賞。2013年には『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞している。村山氏と同じく、本講座への登壇は2年ぶりとなる。

 さらに、菊地朱雅子氏(幻冬舎)、三村遼子氏(KADOKAWA)、村上龍人氏(新潮社)もゲストとして講評に参加した。

 講座の冒頭では、まず世話役の池上冬樹氏(文芸評論家)が講師陣を紹介し、次いで村山氏がマイクを取ってあいさつをした。    
「こんにちは、村山由佳です。山形に来るのは、前回の講座以来なので2年ぶりになりますね。バスに揺られながら、懐かしく思い出しておりました。前回も2月だったので、次に来るときはもうちょっとさわやかな季節がいいですね(笑)。今日はよろしくお願いします」
 続いて、ゲストの千早氏がマイクを取る。
「千早茜です、こんにちは。私は、去年の7月に鶴岡に来ました。即身仏が目的だったのですが、羽黒山にも登りました。2446段の山道が厳しかったですね(笑)。いまだかつてかいたことのないような汗をかきました(笑)。一緒に行った編集者さんがその後に体調を崩しましたね。そこで取材したことも、これから小説に書く予定です。本日はどうぞよろしくお願いします」

 今回のテキストは、エッセイが3本、小説が2本。

・佐藤なつ「秘密」(7枚)「消印有効」(9枚) ※エッセイ
・座光寺修美「四枚のはがき」(7枚) ※エッセイ
・新堂麻弥『記憶からの呪縛』(41枚)
・佐藤陽子『さえずり』(77枚)   

◆佐藤なつ「秘密」(7枚)、「消印有効」(9枚) ※エッセイ
「秘密」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9418554
「消印有効」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9418538
 気功教室で知り合った典子さんには「秘密がある」と噂を聞いた筆者が、一緒に行った旅行先でその出生や生い立ちの秘密を聞かされる「秘密」と、文学賞の応募締め切り当日に、郵便局へ発送しに行った筆者が、窓口で体験したあわただしい顛末を描く「消印有効」の2篇。筆者は主に小説を書いているが、ブログを通じてエッセイ的な文章も多く書いてきた経験がある、とのこと。

・池上氏の講評

 これはブログですね。読者に読んでもらいたいというよりも、自分の書きたい気持ちが優先して、自分の話に終始している。自分の話に終始していてもいいのですが、そこに普遍性がなければ何の意味もない。これは作者の話だが、同時に自分の話でもあるというふうに引きつけて考えさせないといけないのに、それが出来ていない。
 「消印有効」は、原稿の郵送がぎりぎり間に合ってよかったで終わりになってしまう。大事なのは普遍的な部分で、こういう間に合うか間に合わないことが読者のみなさんの日々の生活にもある、と思わせないといけません。
 そのためにはどうすべきか。おばあさんの話の使い方に工夫があるといい。おばあさんの葉書のことをメインにして書いて、自分が送ろうとしている原稿も、傍から見ればこのおばあさんの葉書と同じかもしれないと、ちょっと引いて考える。そこをもっとふくらませて書くと、読者も共感できるものになるかもしれません。

・千早氏の講評
 これはエッセイなんですか? いただいた資料に何も書かれていなかったので、私は小説かと思って読みました(笑)。
だとすると、「秘密」の典子さんも実在の方なのでしょうか。小説だと思って読むと小さなエピソードにリアリティがあって面白かったのですが。エッセイだとすると、もうちょっと着地点というか、最終的に何を伝えたいのか考え、ある程度しぼって書かないと、ただの記録になってしまいます。
「消印有効」は、ずっと「ドキドキして」とか、心情ばかりを書いているので、もう少し街の風景などを描写すると、想像しやすいかなと感じました。説明もちょっと多いですね。
 小説として読むのと、エッセイとして読むのでは全然見方が違ってくるので、今ちょっと出てこなくなってしまっていますが(笑)、書く前にまず何を書きたいのか明確にして、それから書きはじめたほうが、わかりやすいし伝わりやすいと思います。

・幻冬舎 菊地氏の講評

 私も、これは小説と思って読んでいました。今回拝見した中では、一番好きな作品ですね。シチュエーションコメディみたいな感じになっていて、テンポよく書かれていて、しかもそこにおばあさんの葉書という、もうひとつのエピソードが乗っかってきているところがすごく面白かったです。
「秘密」のほうも、ユーモアがよく書けています。ユーモアって、感動や涙より難しいと思っていますので、たいへんお上手な方だと思いました。

・村山氏の講評

 私はこの講座にそろそろ慣れて、スレてしまっているんでしょうか、テキスト全体の、ラインナップのバランスからいってこれはエッセイなんだろうな、と思って読んでしまって(笑)、小説とは思いませんでした。
「消印有効」を読ませていただいて、私自身が初めて投稿したころのことを思い出しました。こういうぎりぎりの焦りってありますよね。みなさんもおっしゃっていますけど、秀逸なのは、このおばあさんの、ナンプレの葉書ですよね。ここをもっとクローズアップして、自分の切羽詰まった感じと、おばあさんも切羽詰まっているけど「でもナンプレでしょ?」というギャップを、もっとユーモラスに書けたらいいんじゃないかな。
 短い作品でも、どこにクライマックスを用意するかを想定して、そこに向かって無駄なく書いていくようにすると、密度の濃いものになると思います。
「秘密」では典子さんについて書いていますが、読者は典子さんって誰なのか知らないわけです。典子さんと読者の間に書き手がはさまって視界を邪魔していて、話が遠い感じになっちゃうんです。小説では人物の視点ということが大切になりますが、エッセイでも、誰を主人公にし、誰について書くのか、明確にしておいたほうがいいと思う。
 あと、これは佐藤さんだけではないのですが、エッセイはもっと短く書く練習をしましょう。私たちに依頼が来るエッセイも、ほとんどは3枚程度です。3枚で、読者の印象に残ることがどれだけ書けるか、短距離走みたいな練習をされるといいんじゃないでしょうか。

◆座光寺修美「四枚のはがき」(7枚)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9415422
 この講座では常連投稿者である、座光寺さんの連作エッセイのひとつ。
 90歳を手前に、老人施設に入所した友人「よしさん」から、筆者のもとに葉書が届く。よしさんの葉書を読みながら、その人柄とかつての交流を懐かしむ筆者だが、葉書は3枚で途絶える。そして、しばらく間が空いてから4枚目の葉書が届くが……。

・池上氏の講評
 初めて読んだ人は短くてよくわからないかもしれませんが、この短い中で引用されている4枚の葉書が、とてもいいんですね。文面がだんだん軽くなっていく、生命のエネルギーが消えていく感じがある。そしてそれを見つめている、作者がいる。座光寺さんはこういう私小説的な作品を書いてきているので、これでいいんです。
 切ない、悲しい感じを表現するために、この4枚の葉書があるんですね。切ない、悲しいなんて一言も書いていないのに、読者は切なさと悲しさを感じる。しかも綿々と書くのではなく、さっと切り上げるところもいい。作者の死生観と寂しさが行間から伝わってきて、これは年季の入ったいい文章だと思います。

・千早氏の講評

 私も、これは短い中にさらりとした悲しみがあって、好きだなと思いました。
 これは本当に個人的な趣味なのですが、「たいせつ」とか「こころ」「ひとり」といった平仮名の使い方が良くて、主人公はこういったものに対して柔らかな印象を持っている方なのだな、というのが字面から伝わってくるのが、すごく好みでしたね。
 これも個人的な好みですが、たとえばいただいた野菜の匂いとか、表面の瑞々しさとか光、生々しさなどを、生の場面で入れておくと、死んだときのあっさりした寂しさが、よりひきたつのではないかと思います。
 終わりも、さっぱりと終わっていて私は好きなのですが、最後のところに「よしさんの年賀状は来ていたのに・・・(印刷だった)」とカッコ付きで書かれていますね。ここではカッコを使わないほうが情感はでるので、ここはもったいないなと感じました。

・村山氏の講評

 千早さんと同じことを感じていました。影を書くときには光を書いたり、光を書くときにはその前に影を用意したり、といったたくらみがあると、自分の言いたいことが引き立つんですね。
 ただ、私は1年前に父を亡くしたんですけど、それがあまりに突然で、何の前触れもない、いわゆる小説の伏線に相当するものがなかったせいでしょうか、人の死を扱ってたくらみがないことがこの文章にとってはいいのかもしれない、とも思いました。それぐらい、好きな文章でした。池上さんからこれは連作だと今うかがったので、そういうことだったのかと胸に落ちたんですけど、だんだん行数が少なくなっていく葉書の描き方からは、作者の方が、よしさんの死を受け容れつつ自分は最後の生を輝かせようとする、老いのプライドみたいなものを感じられて、とても好きです。たくらみのない文章って、なかなか書けるものではありませんから。

◆新堂麻弥『記憶からの呪縛』(41枚)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9418527
 一之瀬未久のもとに、二十五年前に家族を捨てた母咲江から、固定電話の留守番電話にメッセージがふきこまれた。「帰るから」という言葉に、未久は子供の頃に、咲江から受けた数々の思い出したくないことや、妹悠希との記憶がよみがえってきた。
 悠希に母から電話があったことを告げ、一緒に住むことになったら、どちらが面倒を見るか話し合っているうちに、お互いに姉妹が抱えていた気持ちをはきだすことになってしまった。
 そして、二十五年ぶりに再会した母から、悠希の本当の両親の名を聞き出すと同時に、未久が覚えていた記憶と、真実が違うことを知ることとなった。

・三村氏の講評

 どんでん返しなどミステリの要素があって、私の好きなタイプの作品でした。主人公が見ていた母の姿が、実は違っていたというアイデアはすごくいいと思います。
 ただ、ラストにかけて真実がぱたぱたと明かされていく展開が、急なのがもったいなかったです。母親から物語をひっくり返す事実が明かされるシーンが地の文でばーっと書かれていくんですが、ここは重要なところですから、地の文でまとめてしまうのではなくて、ちゃんと会話にして、お母さんの話に娘たちがどう反応したのか、というところを書いてほしかったと思います。

・池上氏の講評
 新堂さんはずっと山形弁を多用したユーモア・エッセイを書いてこられましたが、今回はシリアスな小説です。しかも山形弁が一言も出てこない(笑)。
 辛口で言うと、台詞付きの長いあらすじのような書き方になっている。ラストのどんでん返しは非常に快いし、面白い。主人公の、啖呵の切り方というか、ずばずば言う語り口もいい。でも、冒頭からずっと説明的で、そこが惜しい。どうしても人物の過去を説明的にたどると、印象があらすじ的になる。やはり41枚という分量では、この物語は書き切れませんでしたね。この倍ぐらいは必要です。母と娘、それに姉と妹の関係も書いてほしいし、それにお父さんが全然出てこない。このお父さんの、いいかげんさをもっと書いていくと、もっと膨らんで面白くなったと思います。

・千早氏の講評
 この分量で、姉妹の葛藤と、母親との確執の、両方のテーマを書くのは無理があるなと思いました。そのせいであらすじっぽいというか、事実だけを書いていく形になってしまったのが、もったいないですね。
 私が気になったのは、お母さんと、育ての親のような朝子さんの、話し方が似ているんですよね。顔も浮かんできません。どっちがどっちかわからなくなるし、書き手も途中で混同してしまっているところがあります。これだけの枚数の中に、女性が4人もでてきている。主人公と妹の話し方も似ているし、美人と不美人という設定なのに、それがキャラクター造形に反映されていません。物語を進めることばかり意識しすぎて、作り物のような会話になってしまっているのが、非常に残念です。

・村山氏の講評

 池上さんがおっしゃったとおり、これはまだプロットの段階だと思います。これをもとに膨らませていくんですけど、この時点ではまだ描写が何もないんですね。
 読み出しから、主人公の夫が単身赴任しているとか、中学生の息子が修学旅行に行っているとか、説明的に書かれているんですけど、これは読み進んでいっても本筋にはまったく関係ない情報ですよね。言わなくていいことは言わない、余計な情報は排除する。そうすることで、作者が本当に言いたいことが伝わっていくんです。この小説に必要な情報だけを選りすぐって投入していく。ときには、敢えて読み手をだますために、情報を差し引いて提示することも必要です。まずはこの、何でも書いてしまう説明癖をやめたほうがいいと思います。
 どんでん返しという手法は、ミステリではとても有効ですが、家族の葛藤をテーマとして書きたいのであれば、これまでとは世界が別の見え方をするようになった後に残る、一筋縄ではいかない感情まで筆を届かせないと、何を書きたかったのか見えてこないと思います。
 たぶん、私がこのテーマできっちり書いたら、最低300枚ぐらいにはなりますよ(笑)。40枚で書くのは、やはり無理です。書きたいことと長さとのバランスも見極めて下さい。

◆佐藤陽子『さえずり』(77枚)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9418517
 ピアノ講師の館野結希は、結婚して三年目の三十五歳。不動産収入だけで生活する夫と二人暮らしだが、夫には射精障害があり、成功したのは新婚旅行の海外での一度きりだった。中途半端に終わる情事の後、夫はフォローすることもなくなったため、結希は自慰で体の熱を冷ますのが当たり前になっていた。
 そんな折、勤め先の女社長から、マッサージサロンを紹介される。サロンの店主・瀬戸ハルキからハンドマッサージを施された結希は、今まで感じたことのない快楽を得る。しかし、マッサージに夢中になってもハルキへの興味は沸かず、次の日には顔すらもおぼろげになってしまう。
 一方で、夫婦で不妊治療を受けることになり、そこでの夫の態度に幻滅し、次第に溝が深まる。夫とハルキ、両方を上手に使い分けようと思っていたが、ハルキの一言で打ちのめされる。自分の内なる声に耳を澄ませた結希は、人工授精を受けるその日に、あてどもなく家を出た。

・村上氏の講評

 この小説に出てくる手触りや音から、ある種の官能性を感じました。実際にピアノのお仕事をされているのかどうかわかりませんが、ご自分にしか書けないものを書こうとされていると思います。
 ただ、要素を詰め込み過ぎた感じがあります。ラストは、主人公の性の解放を描いていますが、それまでフィーチャーされていなかった桜の木が唐突に出てくるので、ちょっと混乱してしまいます。それに、不妊治療というセンシティブな題材を扱っているので、本来ならば主人公の葛藤をもっと掘り下げなければいけないと思います。その辺をもっと整理されたほうがよかったのかな、という印象を受けました。

・池上氏の講評

 僕も村上さんと同じ感想です。掘り下げが足りない。ラストで桜の木と交わるというのも、突飛ですね。それが説得力を持つ世界ならいいけど、全然ない。
 冒頭から、この夫婦が本当に子どもを欲しがっているようには見えないし、主人公の性的な不満をいかに解消するか、というところに向かってしまっていて、言っちゃ悪いけど下品なんですよね。安っぽいポルノ的な表現になってしまう。本を使って自慰をするというのも、やり過ぎな部分があります。
 最後に検体をトイレに流すのも、意味がわからないし、登場人物の動機が不純に見えることもあって、動かし方に無理があるなと思いました。

・千早氏の講評

 私はかなり楽しく読ませていただきました。作者の方の皮膚感覚が優れていると思います。男性器の感触を直接書くのではなく、二人をつなげたピザ生地で表すあたりは、すごくいいと思いましたし、描き方が下品とは感じません。マッサージサロンに行ったあとに、前は美味しかったチョコレートが美味しくないと感じるあたりで、欲望を抑える効果があることを示唆する伏線を入れるところも、上手だと思います。
 性的に満足していない女性が、刺激を求めて秘密のマッサージを受けに行く、という展開は漫画や官能小説にもありがちですけど、この作品では「ゆるやかに去勢されていた」と表現されているように、結果的に欲望を奪われていたことを知り、そこで自分が夫を見下していたことにも気づくという構成も面白いと思います。私だったらここで静かに終わらせると思うのですけど、それは好みの問題なので、このラストシーンが書きたかったのであれば、ありだと思います。
 ただ、ラストで主人公が「美しいものと一緒になりたかったの」と言うのが唐突なので、この桜の木と交わるラストを活かしたいのであれば、もうちょっと伏線を張っておくと、うまくいったのではないでしょうか。

・村山氏の講評

 私は好きですね、この作品。下品とは思わないし、「動機が不純」、上等じゃねえかと(笑)。そこは、男性読者と女性読者で違うのかもしれませんが。
 全篇にわたって、イメージの重ね合わせ、象徴がすごくお上手で、達者な方だなと思いました。いやーな感じの描写も含め、読者に不快感を与えることってなかなか企んではできないことなので、そこはいいなと思うんです。女から見た時の、男の最低な感じを書くのがじつにうまいですね(笑)。激しく言い争うほどではないんだけど、ほんの少しの齟齬、でもじつは根深い断絶をお書きになるのが、非常に上手です。
 自慰をするのにギリシャ神話の本を使うというのも、池上さんはやり過ぎだとおっしゃるんですけど、私はいいと思いました。これが聖書だったら私もやり過ぎだと思うんですが(笑)、ギリシャ神話の本の、装幀も美しいし、ペルセポネが出てくるあたりもその後の伏線になっている。よく考えて書かれたのだと思います。
 ただ、ふたつ指摘します。このラストは、話を広げたものの畳み方がわからなくなって無理やり弾けさせた感じがあってもったいない。もっと静かに終わってもいいです。バス停まで来たならバスに乗ってどこかへ行ってもいいでしょう。何も唐突に桜の木と交わる必要はないと思います。それからもうひとつ、マッサージで欲を抑制されていることを、主人公がどこか予期している文章がありましたね。フェアではあるんですが、その一文を入れてしまうと、読者までそういうことかと気づいてしまう。これはいらない説明です。千早さんの言った、チョコが美味しくなくなる伏線だけで留めておけば充分。
 ピザ生地と男性器にせよ、うぐいすの歌と性的な声にせよ、他にも色々、せっかくこれだけイメージを重ね合わせて自在にお書きになれるのですから、この先は、前もってラストの落としどころを考えた上で書き出すとか、強調したい部分を書くために伏線としてどういう企みを仕掛けるかなど、準備にもうひと踏ん張りしてから書かれると、ぐっとよくなると思います。
 あともうひとつだけ。出だしの、「うぐいすのつたない歌が聞こえると、春が来たと思う」というのは、もったいないですね。うぐいすの下手な声を聞いたら、誰でもそう思います(笑)。せっかく1 行目にうぐいすの声を持ってくるのなら、人がふつうはまず思いつきもしないようなことを描写してみせてください。
 とてもいいものを持っていらっしゃいますから、次に期待しています。

※以上の講評に続き、後半では池上氏の司会のもと、村山氏、千早氏それぞれから見たお互いの印象や、それぞれの作品について、トークショー形式でお話していただきました。その模様は、本サイト内「その人の素顔」にてアップいたします。

【講師プロフィール】
◆村山由佳(むらやま・ゆか)氏
1964年、東京都生まれ。91年『もう一度デジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説大賞佳作、93年『天使の卵- エンジェルス・エッグ』で第6回小説すばる新人賞受賞。2003年『星々の舟』で直木賞、09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞。『放蕩記』『天翔る』『天使の柩』、大ベストセラー『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズなど。現在、小説すばる新人賞、島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞、オール讀物新人賞の選考委員。NHK-FM「眠れない貴女へ」のパーソナリティーも担当。長野県軽井沢在住。

◆千早茜(ちはや・あかね)氏
1979年、北海道生まれ。幼少期をアフリカ・ザンビアで過ごす。立命館大学文学部時代に美術活動を行い、絵に詩をつける。やがて詩作に励み、それを小説にまとめる。2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。『魚神』は翌年、第37回泉鏡花文学賞も受賞する。2013年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞を受賞。14年『男ともだち』で直木賞と吉川英治文学新人賞にノミネートされる。そのほかに『からまる』『眠りの庭』などがある。京都府在住。

【村山由佳氏 著書】
●嘘(Love Lies)  (新潮社)
https://www.amazon.co.jp/dp/410339952X/

●風は西から (幻冬舎)2018年3月29日発売
https://www.amazon.co.jp//dp/4344032683/

●天使の卵-エンジェルス・エッグ (集英社文庫)※小説すばる新人賞受賞作品
https://www.amazon.co.jp//dp/4087484920/

●星々の舟  (文春文庫)  ※直木賞受賞作品  
https://www.amazon.co.jp//dp/4167709015/

●ダブル・ファンタジー (文春文庫)  
 中央公論文芸賞 島清恋愛文学賞 柴田錬三郎賞 受賞作品 
https://www.amazon.co.jp//dp/4167709031/

●放蕩記 (集英社文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/408745245X/

●天翔ける   (講談社文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/4062182599/

●天使の柩  (集英社文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/4087454533/

●おいしいコーヒーのいれ方(1)集英社文庫
https://www.amazon.co.jp//dp/4087470598/
●おいしいコーヒーのいれ方(2)集英社文庫
https://www.amazon.co.jp//dp/4087472027/

●もう一度デジャ・ヴ   ジャンプ小説大賞佳作
https://www.amazon.co.jp//dp/4087485153/

【千早茜氏 著書】
●クローゼット (新潮社)
https://www.amazon.co.jp//dp/4103341920/

●男ともだち  (文春文庫)直木賞、吉川英治文学新人賞 ノミネート作品
https://www.amazon.co.jp//dp/4167908077/

●魚神 (集英社文庫)   小説すばる新人賞  泉鏡花文学賞
https://www.amazon.co.jp//dp/4087467864/

●あとかた (新潮文庫)島清恋愛文学賞
https://www.amazon.co.jp//dp/4101203814/

●からまる (角川文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/4041011728/

●眠りの庭  (角川文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/4041043611/

●ガーデン (文藝春秋)
https://www.amazon.co.jp//dp/4163906444/

●西洋菓子店 プティ・フール   (文藝春秋)
https://www.amazon.co.jp//dp/4163904018/

●おとぎのかけら 新釈西洋童話集   (集英社)
https://www.amazon.co.jp//dp/4087451046/

●桜の首飾り  (実業の日本車文庫)
https://www.amazon.co.jp//dp/4408552097/
●人形たちの白昼夢   (PHP研究所)
https://www.amazon.co.jp//dp/4569836399/

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